第12章 初めてのクリスマス
ホグワーツの馬車に乗り込もうとした時、突然、後ろから冷たい声が響いた。
「おい、クローバー」
振り返ると、そこにはドラコ・マルフォイが立っていた。彼の冷ややかな目が、どこか興味深げにチユを見ている。
「な、何?」チユは少し驚きながらも、冷静装った。
「君、クリスマスの予定は決まってるのか?」と、マルフォイは薄く笑みを浮かべて言った。
「孤児院にでも帰るのか?」
こんな日にまで彼はケンカを売りたいのだろうか?
チユは一瞬、言葉を探しながら答える。
「いや、家に帰るよ」とチユは少し控えめに言った。
すると、予想外な事にマルフォイは少し表情を和らげ「そうか、それは良かったな」と言った。
しかしすぐに思いつきのように、別の言葉を続けた。
「まあ、君がもしクリスマスに暇だったら、うちのパーティに来てもいいぞ。マルフォイ家のクリスマスパーティだ。きっと君が今まで見た事もないくらい豪勢だろう」
チユは一瞬、その提案に驚き、少し困惑した。マルフォイ家のパーティ…?彼がそんなことを言うなんて予想だにしなかったからだ。
「え、でも…」チユは言葉を探しながら答えた。「私は…」
「別に義理で来いってわけじゃない。気が向いたら、来てみろよ」
マルフォイはあっけらかんとした調子で言った。
チユは少し迷った。普段からしばしば嫌味を言ってくるマルフォイが、なぜ突然こんなことを言い出したのか、その理由が全く分からなかった。しかし、彼の言葉に無理に反発する理由も見当たらなかった。
「わかった、考えておくよ」とチユはゆっくりと答えた。
「いい判断だな。お前みたいな奴は、ちゃんと新しい環境を試してみるべきだ」マルフォイは冷たい微笑みを浮かべて、ゆっくりと背を向けた。「じゃあ、また」
そして、彼はチユを残して足早に去って行った。チユはしばらくその場に立ち尽くし、少し複雑な気持ちを抱えながら、馬車に乗り込んだ。