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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第11章 ハリーの空中戦




チユはスネイプの姿を見つけると、即座に飛びついた。

杖を抜かなかったのは、懸命な判断だったと思う。
きっと、杖を出していたら、彼に向かって恐ろしい呪文を唱えていたに違いないから。


スネイプは一瞬、驚きの表情を浮かべたが、すぐに冷徹な表情に戻った。


「一体、これは何のつもりかね?ミス・クローバー」


何のつもりか、こっちが聞きたい。
だが、今は確証がないまま問い詰めても、何の意味もない事はわかっていた。


チユは無理に笑みを浮かべ、「すみません、気分が悪くて…」と口を開いた。


その言葉が、自分の口から出るとき、内心では自分の薄っぺらい言い訳に嫌気がさしていた。けれども、今はこれ以上の事を言うわけにはいかない。状況が許さない。

スネイプはじっとチユを見つめ、眉をひそめた。その眼差しには、何かを見透かすような鋭さがあった。


「そんな程度でこんなところまで来たのか?」


その声は冷たく、鋭かったが、どこか心底面倒臭そうでもあった。

チユは心の中で舌打ちをしながらも、表情を崩さずに言った。
「本当に、すみません。少し休ませていただきます」そして、スネイプに抱きついたまま目を閉じた。


「何の冗談だ?」


スネイプは冷ややかに言った。「早く離れたまえ――」


その時、突然スネイプのマントに火がついた。

座席の下から、微かにハーマイオニーが呪文を唱える声が聞こえた。きっと彼女に違いない。
炎は瞬く間に大きくなり、周囲は騒然となった。

チユは急いでハリーの方へ目を向けた。
すると、ハリーは無事に箒に跨がり、飛び上がろうとしているところだった。

これで、もう大丈夫だ。



チユは杖を取り出し、呪文を唱えた。
「アグアメンティ」


すると、杖から勢いよく水が飛び出し、炎を一気に消し去った。

びしょびしょに濡れたスネイプは、チユを鋭く睨みつけた。
「お礼は今度、魔法薬学の教室を貸してくれるだけで結構ですよ、スネイプ先生。」


その言葉にスネイプの顔がよりひどく険しくなった。言葉もなく、ただその目でチユを睨みつけるだけだったが、その視線の奥に、僅かな驚きと怒りが混じっているのをチユは確かに感じ取った。

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