第11章 ハリーの空中戦
突然、ハリーは一点を目指して猛スピードで降下してきた。
「スニッチを見つけたんだ!」ロンが興奮して叫ぶ。
その瞬間、グリフィンドール席から怒声が響いた。スリザリンのマーカス・フリントが、わざとハリーを突き飛ばしたのだ。
ハリーは辛うじて箒にしがみついていた。
「反則だ!」とグリフィンドールの仲間たちが一斉に叫んだ。
「退場させろ!審判!レッドカードだ!」ディーンが激しく声を上げる。
「サッカーじゃないんだよ、ディーン」とロンが冷静に言った。「クイディッチには退場はない。ところで、レッドカードって何?」
そのやり取りが繰り広げられる中でも、試合は続いていた。
しかし、途中でハリーの箒の挙動がおかしくなり、完全にコントロールを失ってしまった。
双子が急いでハリーに近づく。
自分たちの箒に乗せようと試みるが、近づくたびにハリーの箒はますます高く飛び上がり、手がつけられない。
双子は、もし落ちてきたときにすぐにキャッチできるよう、ハリーの下で円を描くように飛び始めた。
「さっきぶつかった時におかしくなったんじゃ!」チユが慌てて声を上げる。
「そんなことはない。強力な闇の魔術以外、ニンバス2000にそんな仕掛けはできない」とハグリッドの震えた声が聞こえた。
強力な闇の魔術―――。
そのような力を使ってハリーを陥れようとする人物は、ただ1人しかいない。
「やっぱり、そうだったのね」ハーマイオニーが息を呑んだ。「スネイプよ…見てごらんなさい」
ロンが双眼鏡を手に取り、向かい側の観客席の中央を見つめると、スネイプが立っていた。ハリーから目を離さず、無意識に呪文をつぶやき続けている。
「呪いをかけてるんだわ」とハーマイオニーが言った。
その言葉を聞いたチユは、即座に人ごみをかき分けて、教職員用のスタンドに向かって走り出した。
「待って、チユ!感情的になっちゃダメよ!」とハーマイオニーが後ろから叫ぶ声が届くが、ハリーが危険な状況にある今、冷静でいることは不可能だった。
スタンドにたどり着いた瞬間、目の前にクィレル先生が立っていた。
しかし、急には止まれない。チユはそのまま、クィレル先生を勢いよく突き飛ばした。
謝る暇もなく、むしろこんなところに立っているクィレル先生に対して、怒りが込み上げてきた。