第11章 ハリーの空中戦
「そう、あとはゆっくりかき混ぜて…あぁ、もう少し慎重に」
ゼロがチユの手を優しく取って、後ろから静かに大鍋を混ぜた。
その手つきは落ち着いていて、頼もしさを感じる。
「できた…!!」
チユの顔に喜びの表情が広がり、思わず声を上げた。
何度もチユの不器用さにゼロは苦笑いしていたが、それでも無事にハナハッカ・エキスの調合に成功した。
これがチユが初めて完成させた魔法薬だった。
「ありがとう!あなたって本当に天才!」
チユは嬉しそうにゼロを見上げ、満面の笑みを浮かべた。
「いや、俺なんて…」
ゼロは少し照れたように頭をかきながら言った。
「でも、いつでも頼ってよ。魔法薬に関してなら、手伝えることがあるかもしれないから」
「私もゼロみたいな才能があればなぁ…」
チユは少し残念そうに言いながら、ゼロの腕に視線を落とす。
その眼差しには、彼の持っているものへの憧れと少しの嫉妬が交じっていた。
「俺の母は優秀な薬師なんだ。だから、幼い頃から魔法薬に触れる機会が多かっただけで、才能なんかじゃないよ。」
彼のサファイアの様な瞳にはどこか寂しさが滲んでいる。
「じゃあ、ゼロも薬師を目指しているの?」
ゼロは一瞬黙り、視線を遠くに向けた。その沈黙の後、少し照れくさそうに顔を赤らめながら言った。
「いや、俺は………笑わない?」
「笑わないよ」
チユは驚いたように目を見開き、すぐに否定する。
ゼロは苦笑いを浮かべながら言った。
「魔法生物が好きで…魔法生物学者になれたらいいなって思ってるんだ。こんな見た目で何言ってるんだって思うかもしれないけど…」
ゼロは少し恥ずかしそうに肩をすくめて、目を逸らしながら言った。
確かに、彼の長身で鋭い目付きからは想像できない職業かもしれない。
しかし、その眼差しの奥には、本当に魔法生物を愛している気持ちが感じられた。