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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第11章 ハリーの空中戦




「すごいよ、ゼロ。もう自分のやりたいことを見つけてるなんて」


チユは静かな声で言い、その言葉には心からの尊敬がこもっていた。

ゼロは少し照れたように笑みを浮かべ、肩をすくめながら答えた。
「いや、そんな大したことじゃないよ。ただ、好きなことをやりたいだけだし」

「でも、それって簡単なことじゃないよ。自分が本当にやりたいことを知っていて、それを大切にしているんだね」
彼女の目は真剣で、その言葉には真心が込められていた。


ゼロはしばらく黙っていたが、やがて低い声で答えた。


「うん、確かに。自分の目標があるっていうのは心強いよ。でも、この夢は叶わないだろうから……」
彼の目は一瞬遠くを見つめ、少しだけ寂しさを漂わせた。


「どうして?」チユは不安げに問いかけた。


ゼロは短く息を吐き、苦笑いを浮かべながら言った。

「両親がきっと反対するだろうから。まぁ、スリザリンに組み分けされなかった時点で、もう見放されているようなものだし…」


その言葉に、チユはふと感じた。ゼロが背負っている『グレイン』という名家の重み。それは彼の人生に常に影を落としているものだろうと。

その沈黙の中で、チユは何も言えずにただ彼を見つめていた。言葉が見つからず、心の中で何度もその思いを繰り返した。
ゼロの目には、きっと多くの希望と同じくらいの絶望が込められているに違いないと感じた。


しばらくして、ゼロはその静かな空気を破るように、意図的に話題を変えた。

2人はハナハッカ・エキスの瓶を並べ、最後にラベルを貼ると、ようやくその日の作業は終わりを迎えた。


「さて、これで終わりだね。」ゼロが静かに言い、手を伸ばした。

チユもその手を受け入れながら微笑んだ。
「うん、お疲れ様!本当にありがとう!」

ゼロは軽く頭を下げ、少し照れくさそうに言う。
「いつでも頼ってくれ。君とこうやって過ごす時間、すごく楽しかったから」


その言葉に、チユの胸の中に温かいものが広がった。
ゼロと過ごす時間は、他の誰とも違って、まるでお日様に包まれているかのような温かさがある。
それは、彼の見た目に反して、驚くほど穏やかな性格がもたらすものなのだろうか。


彼がどんなに素敵な人か、改めて実感した日だった。


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