第11章 ハリーの空中戦
いよいよ明日、待ちに待ったハリーのクィディッチ初試合が始まろうとしている。
その日の最後の授業は魔法薬学だった。
授業が終わり、生徒たちが教室を出ていく中、チユはスネイプに近づき、夕食までの間、調合をする為に教室を貸してほしいと頼み込んだ。
自室ではどうしても上手くいかない。ここならば、環境が整っている分、成功する確率が高いと思ったからだ。
「君に繊細な魔法薬学を学ばせるなんて、無駄だと思うがね」
スネイプは冷ややかな目でチユを見つめ、言い放った。
「お願いします、私…どうしても脱狼薬を作れるようになりたいんです」チユは必死だった。
「あまりにも無謀な願望を持っているようだなミス・クロバ。人狼のお友達でもいるのかね?」
スネイプは皮肉げに不敵な笑みを浮かべ続ける。
「高度な魔法薬だ、君が一生かけても作れるようになるとは思えんがな」
チユはその言葉に一瞬心が折れそうになったが、決して諦めるわけにはいかなかった。
その時、教室の扉から静かな声が響いた。
「あの…俺も調合の予習をしたいので、彼女と一緒に残ってもいいですか?」
ゼロ・グレインだった。彼は魔法薬学において、誰よりも優秀な生徒だった。あのハーマイオニーさえも、彼にはかなわないと言われているほどだ。
ゼロがそう言うと、スネイプは一瞬眉をひそめ、怪訝な顔をしたが、しばらく黙って考えた後、仕方なさそうに言った。
「…仕方ない、決して長居はしないように」
スネイプはそう言って、教室を出て行った。
普段は整然と片付けられている教室の中に、その日は数々の魔法薬の材料が無造作に置かれていた。
一瞬、これがスネイプなりの優しさなのだろうかと思ったが、すぐにその考えを振り払った。
彼の優しさなど、あの無愛想な態度からは到底想像できなかったからだ。