第1章 空からの知らせ
「何処に行くの?」チユは興味深げに尋ねた。
「ダイアゴン横丁だよ。」
「昨日みたいに姿現しで?」
チユが少し不安そうに聞くと、リーマスは笑って首を横に振った。
「いいや、今回は煙突飛行ネットワークで向かうよ。使った事は?」
その存在を知ってはいたが、孤児院で外出禁止だったため、もちろん使ったことはなかった。
「いいえ…」
「そうか、でも大丈夫だよ。難しくない」
リーマスは優しく言って、チユを安心させようとした。
食事を終えた2人は、身支度を整えた。とはいえ、彼の家には子供用の服など無く、チユは髪を軽くとかすだけだった。
リーマスは、何か思い付いたようにチユに自分の帽子を渡し、それを深くかぶらせた。
帽子が大きすぎて、チユは顔を上げて前を見るようにしなければならなかった。
きっと、自分の異色の目が目立たないように配慮しているのだろうと分かっていたので文句は言わなかった。
そしてリーマスは暖炉の前に立ち「これは煙突飛行粉だ」と袋に入った緑に輝く粉を一つかみふりまく。
すると炎は不思議なエメラルドグリーンに輝いた。
「すごい!」
「この中に入って、行きたい場所の名前をを叫ぶとそこへ行けるんだ。だが、はっきり発音しないと目的地とは違う場所に飛ばされてしまうから気を付けて」
そう言われて不安になったチユは「ダイアゴン横丁…ダイアゴン横丁…」と何度も繰り返し練習をした。
その姿をみてリーマスは微笑む。
「その調子なら大丈夫だ、それにもし君が違う場所に飛ばされたとしても私が必ず探し出すから」
実際にリーマスはあの場所を見つけてくれた。
何処に行ったとしてもきっと彼ならまた自分を救い出してくれるだろう、と安心したチユは暖炉の中に入った。
「ダイアゴン横丁…!」