第10章 ハロウィンの大惨事
グレンジャーはうつむいて出て行った。
マクゴナガル先生は視線を次にチユたちに向け直した。沈黙が部屋を支配する。
「先程も言いましたが、あなたたちは運が良かったのです。しかし、1年生が大人の野生トロールと対決するなんて、到底できることではありませんそれでも、10点はあげましょう」
その言葉に、3人は顔を見合わせ、ただ静かに階段を上った。
ロンが口を開いた。「3人で10点って少なくないか?」
「いや、5点だよ。ハーマイオニーの5点を引くとさ」ハリーが訂正する。
ロンはしばらく黙っていたが、やがて肩をすくめた。「確かに彼女が助けてくれたのはありがたいよ。でも、僕たちだってあいつを助けた」
「そうだね。彼女が泣く事がなければ、助けは必要なかったかもしれないけど」
チユの言葉に、ロンは言い返すこともなく、黙って歩き続けた。
談話室に戻ると、そこは生徒で賑わっていた。
誰もが談話室に運ばれてきた食べ物を食べている中で、グレンジャーだけが、扉のそばに立って3人を待っていた。
気まずい空気が流れる。誰もが言葉を探し、しばらくその場で足を止めた。
ハリーが最初に声をかけた「あの…ありがとう」
ロンが続けてぼそりと呟く「まぁ、助かったよ…」
グレンジャーは少し驚いたように顔を上げ、表情を少し和らげた。「あなたたちこそ、ありがとう…さっきはお礼が言えずにごめんなさい」
その言葉に、チユは黙って視線を落とした。
彼女に対しての今までの態度を思い返すと、どうしても顔を上げることができなかった。
グレンジャーが自分に向き直ると、さらに気まずくなる。
「私、あなたに嫌われているんじゃないかって思ってたわ」
その言葉を受けて、チユは心の中で苦笑した。
実際に嫌っていたからだ。
「でも、あなたが私の名前を呼んで、心配してくれてすごく嬉しかった。」
グレンジャーが続けたその言葉に、チユはふっと胸が熱くなった。言葉にはできなかった感情が、今、少しずつ形を取るような気がした。
「無事で本当によかった」そう心から思い、チユは微笑んだ。自分の中で、何かが少しずつ変わり始めているのを感じた。
その微笑みに、彼女もほんのりと優しい表情を見せ、静かな温かな瞬間が、4人の間に流れた。
その日を境に、グレンジャーと共通の経験を通じて、友情が芽生え始めていた。
