第10章 ハロウィンの大惨事
気絶したトロールの前で、3人は顔を見合わせ、しばらく沈黙が続いた。その後、思わず渇いた笑いが漏れた。
「やったのか…?」
「ああ、どうやら気絶してるみたいだ」
「グレンジャーは!?」チユは慌てて女子トイレの個室に駆け寄り、そこでヘナヘナと座り込んでいるグレンジャーを見つけた。
「あなたたち……なんてことを!」グレンジャーは顔をしかめて、怒りと驚きが入り混じった表情で彼らを見上げた。
元気そうで安心した。
相変わらず可愛げのない言い回しだが、今はそれが妙に落ち着いた気持ちにさせた。
遠くからバタバタと足音が近づいてきた。3人は顔を上げ、瞬く間にマクゴナガル先生が飛び込んできた。そのすぐ後にスネイプ、そして最後にクィレルが姿を現した。
クィレルはトロールを見た瞬間、弱々しい声を上げ、恐怖に震えていた。スネイプは無言でトロールをじっと覗き込んでいる。マクゴナガル先生は冷徹な目でハリーとロンを見据え、その表情は怒りに満ちていた。チユは初めて、こんなにも怖い先生の顔を見た。
「グリフィンドールに点がもらえるかも、なんて思ってたのに」と一瞬思うも、その希望はすぐに消え失せた。
「一体、あなた方はどういうつもりなのですか?」マクゴナガル先生の声は冷静だが、その中に明らかな怒りがこもっていた。ロンはまだ杖を振り上げたまま立っており、他の2人も何も言えず、うつむいている。
「ロン、杖を下ろして!」チユが心の中で思い、ロンがやっと杖を下ろした。
その時、ハーマイオニーがようやく立ち上がり、力なく言った。「マクゴナガル先生、聞いてください。3人は私を探しに来てくれたんです。私がトロールを倒すつもりで、無謀に向かっていってしまったんです」
ロンは目を見開き、驚きのあまり杖を落としてしまった。ハーマイオニー・グレンジャーが、先生に真っ赤な嘘をついている……彼女は完全に自分たちを守ろうとしていた。
「もし、3人が見つけてくれなかったら、私は今頃、殺されていたかもしれません!」
その言葉に、マクゴナガル先生は深いため息をついた。「…貴女には失望しました、ミス・グレンジャー。」その冷たい声に、ハーマイオニーは身を縮めた。「グリフィンドールから5点減点。分かったら、すぐに寮に戻りなさい。先程のパーティーの続きをしています」
