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ハリー・ポッターと笑わないお姫様【1】

第10章 ハロウィンの大惨事



「監督生、すぐに自分の寮の生徒を引率して、寮に戻りなさい」

ダンブルドアの冷静な指示が飛ぶと、真っ先にパーシーが立ち上がり、引率して大広間を出て行った。生徒たちが一斉に廊下に出ると、廊下はまるで川のように押し寄せる生徒たちで溢れ、進むのも一苦労だった。

「どうして、トロールがこんなところに来たんだろう…」ハリーが疑問を口にしたが、その質問に答えられる者はいない。

「ハロウィンの出し物だったりして」チユが不安げなハリーを励ますように言った。

少しでもその可能性があれば、という願望がこもっていた。しかし、内心ではわかっていた。
クィレル先生のあの様子は、絶対にただ事ではない。仮に出し物の演技だったとしても、普段の彼の姿からはそんな器用なことができる人物には見えなかった。

混雑する廊下を進んでいると、ハッフルパフの生徒たちとすれ違った。その瞬間、チユは思い出し、急いでハリーとロンの手を掴んだ。


「ねぇ、グレンジャーが…!」

「え?」

「彼女はトロールのことをまだ知らないよ…!」

「どうしよう…」ロンが小さくつぶやく。

「助けに行こう」ハリーが真剣な表情で提案すると、チユとロンは一斉に力強く頷いた。

パーシーに見つからないよう、3人は静かに寮とは別の廊下を走り抜けた。しかし、曲がり角を越えた瞬間、後ろから急いで追いかける足音が響いた。三人は慌てて近くの石像の陰に飛び込む。ちょうどスネイプがその前を通り過ぎ、4階へ続く階段を上っていった。

「いったい、どこに行くんだろう?」ハリーが低い声でつぶやく。

「知らないよ、早く行こう」ロンが答え、すぐに廊下を渡り始めた。


スネイプの足音が次第に遠くなるのを確認し、3人は足音を立てないよう、息を殺して廊下を渡った。運良く見つからず、女子トイレの近くまでたどり着いたが、向こうからは巨大なトロールがゆっくりと歩いてきていた。その巨体には巨大なこん棒が引きずられ、地面にゴンゴンと音を立てていた。


「あれがトロール…?初めて見る…」チユが呆然とその姿を見つめていた。

「見つかるとまずい」ロンが一瞬で状況を察し、チユを守るようにそっと身をかがめさせ、頭を低くした。

トロールは愚鈍で動きも鈍いが、その力強さは計り知れない。力任せに振り回されれば、ひとたまりもない。3人は息を呑んでその動きを静かに観察した。
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