第5章 【ご主人様】
「一体何時まで私に手を出さないおつもりですか...」
ーーーそうなのです。
主様、その目的で私を飼っておきながら、半年間、私の手も握った事もありません。
「心の準備ができなくてね...そうかすまなかったね、凛....」
と、ここで私は顔を傾ける。
「なぜ謝られるのですか?」
無表情のままサラリと答えた。
「うっ...そ、そうだね凛...君目線、こんな年上のオッサン相手じゃ嫌だろうにね...」
「あまりご自分を卑下なさらないで下さい、主様」
ここは主様のお部屋の中。
玉座のような椅子に座る主様の隣で、私は思った。
ーーーいつまで、この調子で私を拘束し続けてるつもりなのでしょう...
ーーーこの間の"、俺が気付かなかった時、耳をふーっとして"は、精一杯のご命令だったのですね。
呆れて軽いため息をついた途端、何やら外で揉める声が聞こえてきた。
窓の方に視線を移す。
男子高校生2人が、何やら口喧嘩をしているらしかった。
「あ、晶くんッ...ッだめッ...!」
「うるせぇキスぐらいいいだろ!」
ーーーあの2人、付き合っているのでしょうか...?
「こないだは学校の図書室でヤったんだから!!こんぐらイイだろ!黙ってキスされろ!!」
ーーー凄いですね...
男子高校生でも、学校という公共施設で猥褻行為をするというのに...
それに比べて私たちは...
その瞬間、2人の男子高校生はぶちゅっ..!とキスしていた。
ーーーなんとまぁ....
目を見開いてしまった。
ーーー"羨ましい"ものです....
私も主様と、いい加減キスぐらいは...........
ーーーそう。私は、主様に憎まれ口ばかり叩いておきながら、不器用な主様を溺愛してしまっているのです。
窓から視線を外し、主様に向き直る。
「主様...」
ぎしぃ、と、主様の机に手を置いた。