第10章 【後輩】
「そこ!何をしている!」
その瞬間、警察が駆けつけてきてくれたようだ。ホッ...と胸を撫で下ろす。
「げっ誰だサツ呼びやがったの!!」
ーーー俺です、なんて絶対言えねぇ...!
そのまま、不良たちは警察に連行されたようだった。
その瞬間、制服の袖を掴まれる。俺が今まさに庇った、男子中学生から。
「あの...ありがとう...ございます...っ」
ーーーありがとう、ございます...
じぃいん、と胸に染み入るものがあった。頬の痛さも相まって。
「いえ...俺はこのくらい...」
恐怖心が無くなっていき、優越感を感じ始める。
ヒーローっぽい台詞なんて、不良たちの前では喋れなかったけど...これは十分、"聖人"といってもいいのではないか...
ふつふつと、その想いが込み上げてくる。
「僕...霧橋想と言います、アナタのお名前...お聞きしてもいいですか...?」
ーーーえっ...
男子中学生の、俺への羨望の眼差しに心がぐらつく。
「あ、あぁ俺は柊ーーー」
「君!ちょっと、署まで私たちと共に来てくれないか?」
警察に間に割って入られる。事情聴取のために、連れられそうになる。
「えっ、あっ、ちょっ、待っーーー!」
男子中学生ーー想君の叫びも虚しく、そのまま俺は引っ張られていかれた。