第10章 【後輩】
「オラァ!金!出せやぁ!」
電信柱の影に隠れて、不良グループが男子中学生につっかかっている。
「はっ...はいぃ...出しますから!」
通行人は、見て見ぬふりだ。
...ベタなカツアゲやってるな...
流れてゆく通行人の中で、はぁ...と俺は息を吐く。
警察に通報してやる事ぐらいはできるか...
ーーー俺はこん中で一番聖人だからな...
そう思うと、心は自己愛に酔いしれる。人を助けるモチベーションがグンと上がった。
冷静にスマホを取り出して小声で通報し始める。
「んだよ!これしかねぇのかよ!」
不良グループは、中学生男子から渡された財布を地面に捨てた。
「ちっ、金無ぇなら殴らせろ!」
ビクッと、中学生男子と共に俺は肩を震わせる。
ーーーマズイな...
中学生男子は、目に涙をいっぱい浮かべていた。
ーーー気の毒に...
流石の俺でも、あそこに割って入る勇気なんて無ぇぞ...しまったな...このままじゃ...
ーーー"殴られている現場に遭遇しているのに、助けられなかった一般人"になっちまうぞ...