第9章 【初恋】
「ん?どうしたの?瞬くん...今日はぼんやりさんなんだねぇ」
はた、とまた我にかえる。泪の顔を夢中で眺めていたらしい。
「あっいやなんでもねぇ!」
声が途中で裏返る。
「んじゃー、俺こっちだから、泪、瞬、じゃあなーっ」
カナエに手を振ったら、泪と2人きりになってしまった。
「....」
若干、気まずい。微笑み続ける泪の髪が、風でさらさら揺れる。
『たはっ、今ピクンってしたぁ〜』
「瞬くん瞬くん、僕また1人お友達が出来そうだねぇっ」
ビクッ!と肩が震える。
今の泪が、中学時代の頃の泪と重なった。あの、ポニーテールから水を滴らせていた泪と。
「あっ!ああ...!よ、よかったなっ」
ーーーやべ...また、思い出しちゃった...
なんとなく、口に手を当てて咳払いをした。
そんな俺に構わず、泪はぐいぐい顔を近づけて喋ってくる。
「あと李太くんともねっ」
「!海里...さんだけじゃなくてそっちの人ともか!」
と、その瞬間、
「瞬くんっ!」
いきなり自転車が俺に突っ込んできたーーー。