第9章 【初恋】
「ぐすっ...ぐすん...っうぅっ...うえぇっ...あああ....」
俺は当時幼稚園児で、休み時間に誰も構ってくれなくて...泣きじゃくっていた。眼鏡を曇らせて。
それは入園式での事。
「お前...千聖って言ったか....」
そこに現れたのは、晶大だった。
「だ、だれぇ...?」
「ちーくん、俺がお前のともだちになってやる...!」
ぎゅうっ!と、晶大に急に抱きしめられる。
「やだ...!同情で友達になってくれたとしても、君も俺より大好きな友達を見つけちゃうのだろう...?」
幼稚園児の頃は、今より割とナイーブな性格だったと記憶している。今はこの通りだがな!
「ど、どうじょう?どういう意味...?まぁとりあえずだっ!未来のことはわかんねぇがっ!今は、お前が1番大好きだぜ!」
ニコリと、晶大は、満面の笑みで向き合ってくれた。
そんな男に、俺が惚れない訳が無くてーーー
「へぇ...!その女の子いいなぁ、俺もそんな事言われてみてぇーっ!!」
千聖を警戒していた事も忘れ、カナエは純粋に盛り上がっていた。
「ん?女の子?それはどなたの事だ?」
千聖はきょとん顔でカナエと目を合わす。
「え?だから、今の初恋の女の子の事ーーー」
その瞬間、後ろからメガネをかけた男が現れ、千聖の口を乱暴に塞いだ。
「おい...千聖...お前図書室に居ねえからどこ行ったかと思えば...何ペチャクチャ喋ってんだ...」
「ん〜!んんんん〜!んー!」
ーーー千聖の友達2か...!泪以外にも、友達いたのかこいつ...!
「行くぞ千聖っ!」
そのまま、千聖は突如現れた男にズリズリと引きずられていく。
「あ...あの...」
カナエが気まずくなって、その眼鏡の人に喋りかけようとしたら、
「.......」
無言で俺たちを睨み返し、廊下に出てその場を立ち去ってしまった。
「な、ななななんだあいつ...っ!」
と、俺は冷や汗をかく。
「千聖くんの彼氏さんだったのかもねぇ〜」
ちょっと申し訳なさそうに、泪はたはたは微笑む。
「お前はそればっかりか...」
千聖が連れて行かれた事を機に、俺たちも3人一緒に下校し始めた。