第9章 【初恋】
あれは僕が幼稚園生だった頃...
「僕にあまり構ってくれなくなったねぇ...泪...」
はぁ...と、空くんはため息をついた。
僕に後ろから抱きつきながら。
側には、生まれたばかりの妹がいる。
「空くん...」
あの、いつもは自信満々で堂々としている空くんがーー...拗ねちゃったんだねぇ...
ーーー可愛いっ♡
「ねぇ空くん、ほっぺた僕に貸してっ」
「ん...?貸したよぉ泪...」
ちゅうぅ♡と、空くんのほっぺたにキスをした。
「泪...っ!」
「空くん...僕、大きくなったら空君と結婚するっ♡」
僕はたはたはと笑ってみせた。
「...ありがとう....」
「空くんのお口にも、キスしていいっ?」
「だめだよ....それは僕の胸が苦しくなってしまう...」
「僕は、兄の空くんが初恋だったかなぁ〜」
ニコニコと、泪は穏やかに微笑む。
がくっと、ずっこけそうになった...。
「は、はぁ...なんだ...そういうのか...」
カナエは、俺の言いたい事を代わりに言ってくれた。
「というかよー、幼き頃のお前の純粋さでお兄さんの方が心臓撃ち抜かれてんじゃねぇか...」
と、続けて俺が泪にツッコむ。
「まぁねっ♡空くんは僕の事が世界一大好きだしっ」
ーーー兄弟仲良すぎだろ...
お兄ちゃんっ子っぽい泪の可愛い笑顔に、今度は俺がやられてしまった。
ーーーイヤイヤイヤ!やられるなやられるな俺...こいつを意識しはじめちゃったら大変な事になるぞ...っ
「あの...ちなみに...千聖...サンの初恋は...ドウナンデスカ...」
宇宙人と対話しているというイメージなのだろうか、カナエは千聖に怯え切っている。一応、話の輪に入れてやろうというカナエなりの気遣いなのだろう。
「おおっ!俺の出番かっ!相手は照れ屋さんでな...だから、名前は言わないがっ!」
何故かモジモジし出して、千聖は語り出す。