第9章 【初恋】
「って!それでベタ惚れだったなぁ〜まぁ、弟に束縛されてその女の子にもう会えなくなったけど...」
「ふぅん〜そうなんだぁ〜それから弟さんとどうなったか、僕、知りたいんだよねぇ〜」
たはっと、泪はマイペースに頬杖をついた。
「だから何でまた昴なんだよ...泪、今の俺のお話ちゃんと聞いていたか?」
カナエは呆れてため息をつく。
「カナエ...、なかなか甘酸っぱい初恋体験してるじゃねぇか...」
グスグスと、俺は涙ぐんだ。
そして何故か千聖には「わはわは!俺の手のぬくもりをあげちゃおう!」と、肩に手を置かれる。
「こっちはこっちですごい俺の話に感情移入してくれるし...!」
俺の突然の涙に、カナエは驚きたじろいでいるようだった。
「ちなみに、僕の初恋はね〜」
「うおっ!急に瞬の涙が止まったっ...!!」
カナエに突っ込まれた通り、一瞬で涙が引いた。
ーーー泪の初恋...気にな...いや...っ何今更ちょっと初恋再熱させてんだよ俺...!もう終わったはずだろ...っ
ドキドキと、心臓は高鳴り始める。複雑な気持ちとは裏腹に。
「どんな女の子がタイプだったんだ?泪は!」
「女の子?僕の初恋の人は、男の子だったよぉ〜」
ブフゥうううーーーッ!!と、唾を千聖の顔面にかけてしまった。
「あっ!ご、ごめん千聖、っくん!」
「わはわはっ!今日最初の水浴びだなっ!」
ーーーかけた俺が言うことじゃないが、もうちょい気にしろ...千聖...
というかそんな事はどうでも良い。今は泪だ。
「えっ、あっ、あっ、そうなの...!?泪は何も包み隠さず言うなぁ....!」
カナエは完全に面食らっている。
「たはっ、カナエ君だって、弟さんじゃん〜」
泪はうりうり〜とカナエにくっつく。
「だから違ぇって!!」
そんなカナエを他所に、泪はマイペースに語り始めた。ーーー