第9章 【初恋】
「ていうかっ!ずっと気になってたんだが泪!確か.,.千聖...くんだったっけ?俺と瞬が知らない泪の友達黙って連れてくるなよ!」
カナエが、泪に盛大にツッこんだ。
ーーー確かに、最初から俺も違和感を感じていたが...
カナエとは違い、俺は千聖の事は知っていた。学校の図書室で、泪と仲良く喋っていたのを見たことがあったから。
「ま、まぁカナエ、そんなに泪をつっつかなくても...」
と、一応フォローを入れてみる。
「庇わなくてもいいよぉ瞬くんっいつもの事だねえこんな事〜」
急に顔を近づけられ、たはっと泪に笑われる。
ーーーだから...!無闇に俺に近づくなって...
「......そろそろ俺は喋ってもいいかぁ!泪ぃ!!」
千聖は、ぷはぁ!と息を吸った。
ーーーこいつ...今まで呼吸止めてたのか...?...何で?千聖って奴は、噂通り変な奴だ...。
「うん、いいよぉ千聖くんっ!あら〜息止めちゃったんだねぇ...2分13秒くらい止められたんじゃない?」
俺たちの会話に加わってなかった間、何故呼吸も止めていたのかを突っ込むような人じゃない、泪は。
ーーーというか泪も何でその時間計ってたんだよ...
「おおっ!!数えててくれたのか!!ありがとうっ!!」
がしっ!と、千聖は泪の手を握った。
「や、やべぇ...千聖...くんだったけ...泪...お前と仲良い奴って、やっぱり変わってるな....」
と、カナエは困惑している。
そんな3人をよそに、ほっと息をつく。
ーーーなんだ、千聖"くん"呼びか。
泪は大抵、みんなにくん付けをする奴だ。泪と小学生の頃からの付き合いの俺だっていまだに瞬"くん"だし。千聖と泪は、ただの仲の良い知人程度だったらしい。
「それで...カナエ...お前の初恋の話、聞かせてくれよ」
なんとか話を本題に戻す。泪の初恋の人を聞く前に、ワンクッション置かせてもらおう。
カナエは、自分の顎をさすりだして語り出す。
「ああ...俺の初恋はなぁ...」