第8章 【ヌードモデル】
布が敷かれたテーブルの上に、座らされている。
勿論、裸で。
『恥ずかしくねぇの?』
友達にはそう言われるけど、仕事として割り切ってしまえば案外集中できるもんだ。
「...んー...もうちょいやっぱ、筋肉質じゃない方がいいんだよなァ...」
少し離れた位置にイーゼルをかけ、そこからひょっこり一条は顔を覗かせてくる。
「...無理ですよ、今すぐ脂肪つけろって言われても」
顔を、なんとなく若干背ける。
仕事として割り切ってるつもりだが、恥ずかしい感情が無い訳ではなかった。
「よし分かった、胸筋の影を少なくするかァ」
一条は急に立ち上がり、俺に歩いて近づいてきた。
「つ、次触られたら俺、容赦しませんから...!」
動揺しまくる俺を他所に、一条は至極冷静でい続けていた。
「あー..騒ぐな...騒いでくれるな、触んねぇから...手ではなァ」
胸筋の真ん中らへんを、絵の具がついた筆でなぞられる。
「あっ...!ちょっ...待っ...!んッ...」