第8章 【ヌードモデル】
肌色の絵の具を、胸筋のラインに沿って筆で塗られていく。
「んっ...はぁっ...!んくッ...!」
反射的に、自分の腕を掴んで胸筋を隠す。
「...何、その顔...ッ」
顔を近づけられ、ビクッ!と肩を震わせる。
俺は、視線を逸らす。
一条は無言で、キャンパスの前に戻って行った。途中、イーゼルに派手に脚をぶつけて。
「大丈夫すか...?」
「............」
無言だった。
無言でどうやら、もう絵を描き始めていたらしい。
「.........」
2人の間に、沈黙が流れる。
舐めまわされるように、一条に隅々まで観察される。
「.....ん....っ」
小さく咳払いをした。
そしたら、一条の手が一瞬止まる。
「あ、ごめんなさい...動いちゃいましたか俺」
「......!」
一条は、顔をかぁあと赤くして、俺を睨んでくる。
「す、すみませんって」
ーーーそ、そんなに睨まなくてもいいだろ...