第8章 【ヌードモデル】
ーーーは?なんだ、こいつ...
「ああッ!誰かぁ!誰か俺を助けてくださぁあああいぃッ!」
乾いた声で、男は叫び続ける。
「やめろ!あっ、いや叫ばないでください!」
アナタが俺を引っ張ったからこんなことに...!と説明している間、俺はこの男の口を手で塞いだ。
「もがっ...ああ口に触るなッ!破廉恥!も...やめろォ...ッ!」
抑えてるのに、その男は赤面で抵抗し続ける。
ーーーもしかして、この男...
その瞬間、頭の上に、ゴンッ!と何かが落ちてきた。
「いててッ!なんだぁ?」
俺の頭に落ちてきたものは、スケッチ帳らしかった。ハラリと、落ちた拍子にページが開かれる。
「ん...?これ、えっと...」
名前まだ聞いてなかったな、と男を振り返る。
男は頭を抱えてぐったりと肩を落としながら、喋ってくる。
「一条獅央」
よく見れば目の下に黒い隈があった。結構格好いい、涼しい顔している。年齢は20代半ばといったところか。
「一条しおう...サンが描かれたやつですか?すごい...やっぱりお上手ですね...」
そこには、女性の裸体の絵ばかり描かれてあった。
「ああそうだァ!」
食いつきが凄まじい。この一条という男。
「女性の裸体画ばかり描いてます〜ってアピールして、カモフラージュするつもりだったのによォ!男性が恋愛対象なのを...今の反応でバレて全て台無しになっちまった...ッ」