第1章 【第1話】ニートを拾って
とにかく、大陸の形とかで自分の国を指してみろと言っても、「あまり外に出たことがなくてよ」と答えられ「地理もわかんないなんて、テメェはどんだけ引きこもりニートだよ?!」と突っ込みそうになったが堪えた。
続いて、日本に貴族はもう居ないと日本史の教科書を出して説明。
海外ではどーなんだと世界史の教科書も出してみるが、昔の貴族の絵をさして「なんだこれ変なの」と笑うだけで話にならず。
ノートパソコン持ってきてサイト検索をかけてみるがザーフィアスなんて名前の国は引っかからない。
寧ろ、パソコンとインターネットの便利ぶりを見たユーリが目を白黒させていた。
この様に試行錯誤を繰り返した結果、私とユーリの常識がほとんどかすりもしないことが判明。
私は頭を抱えた。
「カレーライスとかわかるから、全然通じてないわけでもないけど。
出身地とか大切な部分がまるで異世界ですよ、これ」
現実を突きつけて、あわよくばボロを出すんじゃないかと試してみたものの。
彼はザーフィアスの国のなりをその目で見て体験してきたように話すのだ。
嘘や電波にしては、どうにも出来すぎている。
当人は黙ったまま、厳しい表情でテーブルに広げた地図を見つめていた。
「ユーリ?」
「。オレがいた場所ってどこだ?」
「工場裏の森のこと? 案内しようか」
「いや、遠慮しとく。
夜中に女の子連れまわせねぇし、道を教えてくれるだけでいい」
言われて、私は工場の特徴と伝え、メモ用紙に簡単な地図を描く。
それを受取った彼は、回れ右して玄関へ向かった。
「ちょっと、本当に一人で行くつもりなの?
えーと、よくわかんないけど、危ないよ。
ほら、近くで強盗がでたって聞くし……」
「盗賊くらいどうってことねーよ」
「と、とうぞ……、いやいやいや。病み上がりなんだし、もう少しウチで休んでなよ。
お父さんたちしばらく帰ってこなから、一週間くらいいても差し支えない……と思う」
「サンキューな。腹ごしらえもできたし、もう十分だ。
オレに構ってないで、ちゃんと家で大人しく留守番してろよ」
「ユーリ!」
「じゃあな、」
ユーリは追いかける私へ軽く手を振ると、玄関の扉を開けて颯爽と闇夜に消えていった。
大丈夫と言っていたが、カレー2杯かきこんだだけで、ゆっくりしている暇もなかっただろうに。
