第1章 【第1話】ニートを拾って
問題は何をどうやって聞き出せばいいのかだが。
「そういえば、お互い名前も知らないんですよね。
私、と言います。 。女子高生やってます」
「か。変わった名前だけれど、いい響きだね。
ジョシコウセイは、何かの職業でいいのかな」
「女子高生は女子高生ですよ。女の子の高等学校の学生。
そういう貴方はテンプレの勇者だか、騎士のコスプレしてなんなんですか」
「こすぷれ……は、よくわからないけど。騎士であっているね。
僕はザーフィアス帝国騎士団小隊長フレン・シーフォ。
フレンでいいよ」
――フレン。
耳した途端、衝撃が走り、即座に過去の記憶が手繰り寄せられる。
かつて、――つか昨晩。ユーリが板チョコを頬張りながら、"生真面目で融通の利かない頭カチコチの幼馴染がいる"と笑っていたが。
その幼馴染の名前が、フレン・シーフォ。
正に目の前にいる男が、その本人だというのか。
「貴方が、ユーリの言ってた幼馴染?」
「ユーリを知っているのか」
黒髪の青年の名前を出すと、フレンはすぐに反応を示した。
帝都ザーフィアス。
フレン・シーフォ。
ユーリ・ローウェル。
……そうなんだ。そういうことなんだ。
私の国に冒険者風の奇抜な服装で刀や剣を携え、白昼堂々歩き回る人なんていない。
つけただけで体調崩すような腕輪なんてない。
こんな壮大な遺跡なんてない。
ユーリが私の世界に来たように、今度は私がユーリの世界に来てしまったのだ。
どうしよう。どうしてしまったんだろう。
本来来るべきなのはユーリのはずなのに、どうして私が……?
望まなくても、信じられなくても、突きつけられた現実から目を逸らすことはできない。
フレンに優しく抱きかかえられ、見守られても、私の胸の内で見えない不安は止め処なくあふれ出す。
――ユーリ。
耐えられなくて、彼を求めても、あの時のように闇夜から姿を現すことはなかった。
■続く■