第1章 【第1話】ニートを拾って
「のお眼鏡にかなって光栄だね。
できれば、頭がかわいそうという概念捨て欲しいんだけど。
んで、今の話のどの辺がおかしいと思うんだ」
「全部」
「ぶっちゃけて言うな。要点掻い摘んで言ってくれ」
「騎士に追いかけられる理由と魔物がいるところ。
んでもって、銃刀法のある日本で堂々刀所持しているところ」
「騎士に追いかけられたのは、オレが貴族の敷地内に忍び込んだから。
魔物は結界の外に屯していて、自分の身を守る為に刀装備してんの」
私の質問に対し、ユーリは詰まることなくスラスラ答えてみせる。
私にとっては、それが十分異常だった。
「日本に貴族なんていないし。魔物なんて架空の産物だし。
刀振り回したら犯罪なんだけど……」
「……」
「怪我してるって事は、何かしら遭ったわけだよね」
「、混乱しているところ悪いが、オレから質問してもいいか?」
「何?」
「ニホンって、なんなんだ?」
「なん……っ」
ユーリが真顔で言い放ったこの一言で、私の意識が遠くへ旅立ちそうになった。
電波か、電波を拾ってきてしまったのか。
警察に突き出すべきだった。
でももう家に入れちゃったし、遅いし、夕ご飯までご馳走しちゃったし。
突きつけられた現実に戸惑い引こうとも、私を見つめるユーリの真摯な瞳が変わらない。
彼は真剣だった。
「わかった。毒を食らわば皿までよ。
ここまで話が噛合わないってーのなら、噛合うまでとことんやってやろうじゃないの」
「そうしてくれると、オレも助かる。
わからない事だらけで、正直コッチが質問したいくらいだったからな」
「なんだ。最初から聞いてくればいいのに」
「お前にしてみれば、真っ先に招き入れた男がどんなヤツか把握しておきたかったんじゃないのか」
聞き手に回っていたのは、彼なりに気を遣いだったようである。
私もそれに応える為、また彼を確かめる為に地道な作業に打って出た。
手始めにニホンとは何だと言われたので、地理の教科書を引っ張り出して説明。
教科書に載っている地図の日本の場所を指差してみたら、彼、日本語が読めないことが発覚。