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明星の意思、常闇の暁光【TOV夢】

第1章 【第1話】ニートを拾って


残された私は、まるで嵐が去った後のようにボーッと突っ立っていた。
ただの電波にしては、常識以外は至って正気だったし、マジでアレなヤツなら私に迷惑をかけようが構わないはずだ。
なのに彼は私が良いっていうのを断って、一人出て行ってしまった。


「本当は良い人なのかな?」


そう結論付けるのは早いが、気がかりなのは変わりない。
具合が悪くなって倒れていないか。
不審者と間違われて、通報されちゃっていないか。
襲い掛かる公僕相手に、刀振り回してはいないか。
そして、町内銃撃戦へ――

………。
非常に心配だ。

そーいえば、ユーリを運ぶ時に使った台車を返しに行かなければ。
明日は土曜日とはいえ、工場は動いているだろう。
その前に元に戻しておかないと面倒だ。


「台車返すついでに様子を見に行ってみようかな。
後、コンビニでお菓子買っとこう」



そうと決めた私は早々に準備を整え、戸締りをし、工場へ台車を押しながら出発した。







見慣れた通学路の夜道は、昼間に比べてより一層静まり返っていた。
途中までは住宅が並んでいたので然程気にしなかったが、進むにつれて空き地や無人駐車場といった殺伐とした風景が続き、今では点々と灯る街灯しか頼れるものはない。


「夜、歩きで来ると気味が悪い。……なんか肌寒いし、特に背中辺りがスースーする」


自転車で通るなら問題ないが、現在私は制服姿で台車をガラゴロと押している状態。
うん、自分で言うのもなんだが、ミスマッチだ、かなり異形だ、傍から見たら今に至るまでの経過が全く想像できない。
警察に見つかれば、問答無用で補導されるだろう。


「着替えてくればよかった……」


ユーリのことで、無意識に焦っていたのだろうか。
深刻そうな顔をしていたが、一人で森に行ってどうしているのだろう。
あのイケメンのことだから、他の女の子にひっかかったりして。
ていうか、女子より警察に捕まっている確率の方が猛烈に高い。

そうやって物思いにふけっていると、暗闇の向こうから、うっすら煙突が見えてきた。
もうそろそろ工場にたどり着く。


「ユーリ、もう森の中かな」


ひょっとしたら、途中で合流できるかもしれない。
近くに居るのかも、と足を止めて周りを見回そうとしたら、少し後ろの方から足音がした。
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