第1章 【第1話】ニートを拾って
「さっき簡単に自己紹介した時、下町に住んでるって言ってたよね。外国人?」
「ガイコクジン? なんだそれ」
「なんだそれって。
普通に会話できると思ったけど、微妙に日本語通じてないのか……。
えーっと、どこの国の出身なのかなって。
この辺りじゃあ見慣れない服着てるし」
彼は意図が汲めたようで、気を悪くした様子もなくすんなり口を割った。
「ザーフィアスってところなんだが。
やっぱりわかんねぇか?」
「日本じゃないのだけはわかるんだけど。
やっぱ、外国か……」
「ニホン? ガイコク?」
「前に海外ニュースで"強盗犯を刀で撃退!"ての見たことあるから、コスプレして刀携えてても……」
「コスプレ?」
「いや、なんでもない。
ユーリはどういった経緯があって、あの森で倒れていたの?」
私の一言一言にキョトンとしていたユーリだったが、最後の問いはなんとか答えられるのか、唸りながら記憶を辿り始めた。
「ここに来る前って言われてもな……。
いつものように騎士団の連中に追い掛け回されて、運悪く下水道へ落っこちて。
暗いわ、カビ臭いわ、じめじめしてるわ。
ここら辺の時系列わかんねーんだけど。
まあ、とにかく出口探して、延々と魔物を蹴散らして行くうちに力尽きて。
目が覚めたら、ここにいた、と」
ユーリは遠足の感想のようにノタノタ語って、片手で弄んでいたスプーンでテーブルの上をトントンと叩いた。
騎士に追われていたと言うことは、何か悪いことをしたのか。
ていうか、騎士が現役で活躍している国なんてあっただろうか。
それよか、今普通に魔物とか言わなかったかコイツ。
「よくわかんないわ……」
「オレはここがザーフィアスじゃないのと、オレがかなりの異端だということはわかったぞ」
「えばるなよ。私から聞いといてなんだけど、今の話、デタラメじゃないのよね」
「だったら、盛大な三文芝居かオレの頭がイカレてるかだよな」
「マジなのか……。マジで脳みそイカレてんのか、この兄ちゃん……」
「よりにもよって、後者を選ぶなよ。
オレは比較的まともな部類に入ると思うぞ。
……何だ、そのさげすんだ瞳」
「いや。ルックスはいいのになーって」