第1章 【第1話】ニートを拾って
何も無い中に一点、眩しく光る物体があった。
それは私を誘うように、時には強く、時には弱く輝く。
――アレに触れたら、生き返ったりしないかな。
楽観的希望を胸に沈み行く意識を奮い立たせ、光を目指す。
もう少し、もう少し、もう少しで―――
プツリと意識を失った。
胸が痛い。
痛い、痛い、痛い。
痛っ! 痛っ! 痛っ!
――痛いっつの!
どのくらい痛いかというと、肋骨きしんでるんじゃないかってくらい痛い。
一定のリズムでズンズンと胸が圧迫されている。
やめてくれと払いのけたくても、身体が鉛のように重たくて叶わない。
一体何が起こってるんだ。
喋ろうとしたら、今度は暖かくて弾力のある何かが口を塞ぎ、生暖かい空気が喉へと注がれた。
――っ、苦しい!
堪らず目を開くと、淡いプロントの髪が視界を遮っていた。
私の顔に触れるくらい近くにある金色の前髪。
その奥に同じ色の長い睫毛があり、整った眉毛があり、まっすぐ通った鼻があり。
要するに見知らぬ金髪の男の顔が間近にあった。
けれども、目、眉、鼻ときて、なぜか唇が見当たらない。
答えはすぐにわかった。
簡単だ。私はこの男に接吻されているのだ。
かなり濃厚な。
「んぐぅーっ?!」
暢気に脳内で回答ランプ点けている場合じゃねええええ!
乙女初の青春が! 知らねー男に! 味わう余裕もねーわ!!
逃れたくても、身体は起き上がれないし、額と顎は押さえつけられ首も回らない。
さあ、私は目覚めたぞ、早くその口どけやがれ!!
……
……10秒経過。
……20秒経過。
……30秒が経過しました。
いつまでキスするつもりなんだよ、この男!
私が気がついて30秒越えてるよ、いい加減気付けええ!
まずい。このままでは、マジで窒息死する!!
私はかろうじて動く片手を地面に叩き付け、死に物狂いでギブアップを伝えた。
「……! ……っ!!」
「――ッ! 気がついた!」
その甲斐あってか、意識喪失突入目前で、ようやく金髪の男は唇を開放した。
「えほっ、けふけふん!……、こ、このっ!!」
「よかった、間に合ったようだね」
怒りをぶつけようとしたが、金髪男の爽やか抜群スマイルを食らって気が失せてしまった。