• テキストサイズ

明星の意思、常闇の暁光【TOV夢】

第1章 【第1話】ニートを拾って


地面が無い? 崖か? 落とし穴か?!
踏み込んだ足の下には、パックリと穴が開いていた。
誰だ、こんな古典的なイタズラするやつは!!

……あれ、底がない?

下で口をあけている穴は、地球の反対側まで続いているんじゃないかと思うくらい深かった。
どう見ても、人為的にはありえない。
こんなもの昨日まではなかったのに!
内心叫んでいようとも、事実私の身体は目下に大穴へ滑り落ちようとしている。

――こんクソ!

落ちてなるものかと、死に物狂いで右手を上に伸ばし、穴の淵に生えた雑草の束を掴んだ。
けれども首の皮一枚繋がっただけで、インディージョーンズかファイト一発のCMみたく、ぶら下がった状態。
力尽きたら一環の終わりだ。

だが事態は私が思っている以上に最悪だった。


「穴が広がっている?!」


じわりじわりと周りを削りながら、穴は拡大していた。
原理も理屈もわからないが、このままでは命綱であるこの雑草も時期に崩れてしまうだろう。
そうなったら、間違いなく落ちて――死ぬ。


「ユーリ!!」


言い知れない恐怖に襲われ、抗うように彼の名を叫んだ。
分かれてからそれほど経っていないから、遠くへは行っていないはず。
聞こえたのかどうかわからない。
ただ、返事は聞こえてこなかった。

何がどうなっているんだ。
私は夢を見ているのか。

自分の体重を支える右腕が猛烈に痛いので、残念な事に現実なのだろう。

通学カバンをたすき掛けにしなきゃよかった。
降ろしたくても、首にかかって手が回らない。

重い。痛い。
怖い、助けて、苦しい。

手のひらに汗が出てきて滑りそう。

――早く何とかして。

私の心の嘆きも空しく、穴はより一層広がり、命綱がその役目を失った。
たちまち襲い掛かる浮遊感。

――あ、私、落ちる。

絶望と諦めにとらわれる私に、容赦なく重力がのしかかる。
そのつかの間、何者かが右腕を掴んで阻んだ。


「!」

「ユーリ!」


声を聞きつけてきたのか、ユーリが私の腕を握り、命をつないだ。
嬉しい、駆けつけてきてくれたんだ。
けれども、私には安堵する間もなった。
彼は上半身を乗り出しており、尚且つこの穴は現在進行形で拡大しつつあるのだ。


「ユーリ、離れて! よくわからないけど、この穴大きくなってきてる! 落っこちるわよ!」
/ 31ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp