第1章 【第1話】ニートを拾って
「責任重大だなー、ユーリの為にも頑張んなきゃ」
「そーだぞー。キリキリ働いてもらうからなー。
て、世話になってる手前、無茶は言わねえよ。
私生活に支障が出ない程度でいいからな」
「ああ、私のことは構わなくて良いよ。
委員会始まるまでかなり時間があるし、いざとなったら理由つけて、欠席するつもりだから」
「ありがたいね。でも、休むのはよくないな。
なるべく遅くならないよう、急いで行くぞ」
そうやって、他愛ない話をしながら歩いていき、間もなくして工場裏の森へ辿りついた。
森の様子は相変わらずで、数歩先は薄闇に包まれており、無意味に人を寄せ付けない雰囲気を漂わせている。
「何もねぇってのは、嘘じゃないのか。
如何にも何か出ますって感じだぞ」
「いや、ホント何もないんだよ。昨日貴方を見つけたのは例外で。
心霊スポットとかだったら、ここを近道しようなんて考えつかないわ」
「そりゃあそうだな。で、俺がいたところはどこなんだ?」
「もっと奥の方。コッチよ」
昨日の帰り道を思い出しながら、彼を先導し、道なき道を進んでいく。
時々カラスの鳴き声が私の心を脅かそうとするが、後ろから聞こえてくる彼の足音と息遣いが不安を和らげてくれる。
黙々と歩いて、そろそろ足の裏がジンジンしてきた頃、発見場所に到着した。
他よりやや開けた場所、木々の形、間違いはない。
「ここよ。ここで貴方が倒れてたの」
「……雑草と落ち葉と小枝、と。
なんもねーのな、ここ」
彼は足で土を蹴り、周囲へと目を配らせた。
「どうすっか。他に当たれる場所は……」
「周りも調べてみようよ。
私も一部しか通ったことないし、もしかしたら、他の場所で何か見つかるかもしれないわ」
「やるだけやってみるしかないな。
、手伝ってくれるか」
「もちろん。手分けして探してみない?
私、こっち見てくるから、何かあったらここに戻ってくることにしよう」
「了解」
私はユーリの返事を確認して、一人、工場とは反対側へ駆け出した。
この森全部を回ったことはないし、ユーリが昨日ここにいたのだから、他にも何かしら変化があってもおかしくない。
自分にそう言い聞かせて、思い切り踏み込んだ。
が、そこにあるはずの地面はなぜか無かった。
「んな?!」