第1章 【第1話】ニートを拾って
「違う意味で永眠するかもしれない。――じゃなくて!
ユーリの話ーっ」
「駄々をこねるな」
「お菓子とジュース用意するから、ね?」
「よし、まずはオレの交友関係から説明しよう」
安いエサだと駄目元でお願いすると、ユーリは態度を180度変えて喋り始めた。
お菓子は見事ユーリのハートを射止めたようだ。
つか、お前はまだ食べるつもりなのか。
「とは言ってもだ。
詳しく話してみたところで前みたいに伝わらないだろうから、軽くだけどな。
、早く約束のブツを用意して、そこに座りなさい」
「うん。今出してくる。飲物は温かいのか冷たいの、どっちにする?」
「冷たいので」
「よしきた、アイスミルクティー」
「はえーよ、おい。喫茶店も顔負けだな。
じゃあ、寝る時間が惜しいから、早速始めるぞ。
最初にオレの幼馴染の話から――」
私がお菓子と冷蔵庫から飲物を用意すると、待ってましたとばかりにユーリの思い出が花を開く。
彼が宣告した通り、内容はやや理解できない部分があったけれども、それで良かった。
ユーリの身元はわからない、あの腕輪だってよくわからない。明日からどうなるか、予測も出来ない。
けれど、こうして彼と一緒に過ごす時間が楽しく思う。
時計を見るのも忘れ、この緩やかなひと時は夜と共に更けていった。
そして翌朝。土曜日の天気は快晴。
私たちは予定通り、工場裏の森を探索すべく家を出発する。
ユーリは昨日の格好ままで出歩くと、善良な一般市民の性的道義観念を木っ端微塵にすること間違いないので、お父さんの服の中でも比較的無難なものを選んで着せてみた。
今はTシャツの上にジャケット、下はジーンズと自前のブーツを履かせている。
服はショルダーバックにつめて、刀は剣道の竹刀袋のように在り合せの布で巻きつけてただけだ。
「動きやすい服ではあるな。
んで、お前は昨日のままか。その荷物はなんだ? 服はオレが持ってるし」
「学校に用事があるの。……休みなのに、テスト前だってのに、なんだって委員会なんかあるんだろ」
「忙しそうで悪いが、オレにも付き合ってくれよ。
ここではお前だけが頼りなんだからな」