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明星の意思、常闇の暁光【TOV夢】

第1章 【第1話】ニートを拾って


「今はなんともないよ。このことは説明するけど。
そうね、傷の手当てしながらにしようか」

「それこそ平気だってのに」

「ブツクサ言わずに、ここに座って」

「あいよ」


私が救急箱を用意しながら指示すると、彼はソファーにどっかりと腰をかけた。
彼の言うとおり、ほとんどの傷は小さく、手当ての必要がないほど治りかけている。
ただ腕の傷のひとつが大きかったのか、カサブタが剥がれて血がにじんでいた。
身体を拭く際に擦りでもしたのだろう。
丁寧に消毒をした後、大きめの絆創膏を用意している私を彼は促すように問いかけた。


「で、何があったんだ。病気でも患ってたのか」

「ごめん。ユーリの腕輪を触ってたら、急に気持ち悪くなった」

「腕輪……? 魔導器触っただけでか?」

「ぶらす……何?」

「オレんとこには万物を構成するエネルギー"エアル"というものがあってだ。
それを活力にして利用する道具がこの魔導器なんだと」

「エアルって、原子力か気体の名前?
聞いたことないけど」

「ここにもエアルがあるかどうか試したことねえし。
オレもそのテの専門家じゃないからな」

「ユーリはつけていて気分悪くなったりしない?」

「いんやまったく。コイツのお陰でいろいろ助かってるくらいだ。
原因はわからないが、お前はこれに触れない方がいいかもしれないな」


ユーリはそう言って、左腕に輝く腕輪を見つめた。
長い睫、艶やかな黒髪から水滴が頬を伝い、ポツリポツリと零れ落ちる。
正に水も滴るいい男だ。


「てか、ユーリ。髪の毛乾かさないの? 自然乾燥?
湿ってる時の方が髪の毛痛むんだよ。風邪ひくし」

「いいんだよ。面倒くさい」

「メンド臭くて堪るか。弄くり倒したくなるようなサラサラヘアーしといてからに。
ちょっとそこで待ってろ。ドライヤー持ってくる」

「どらいあー? おい、いいって」


ユーリの制止を無視して、洗面所からドライヤーを持ってきた。
何やらブツブツのたまうユーリの髪をドライヤーとブラシを駆使して丹念に乾かし始める。


「こんだけ綺麗な髪してんのに、それを生やしている野郎はどーしてズボラなの」

「オレは人形かよ……」


私にされるがままのユーリは、腕を組んでひたすら作業が終わるのを待った。
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