第1章 【第1話】ニートを拾って
「言ってることが支離滅裂してねえか?
とって食おうってわけじゃねえんだから、事を急いて自ら女捨てなさんなよ」
「ユーリが無神経なんだよ」
「理性があるだけだ。怪我人みるのに、下心なんて出さねーの。
さっさと済ましてやるから、きちんと座ってろ」
「はーい」
「よーし、いい子だ。
えっと、問題の部分は、赤からやや青くなってる最中か。
肩から背中に向けて……腫れてはいない、と」
耳元からユーリの声が聞こえ、左肩に自分とは違う体温がサワリと肌を伝った。
「うわ?! 触らないでよ!」
「触らなきゃわかんないだろ。しっかし、肌が白いと目立つなー」
「あんまし、ジロジロみてないで、さっさとシップを貼って……!」
「はいよ。腫れてないし、色も変わってきてるから。ただの内出血って所か。
色が黄色になるまで、ちゃんと冷やしておけば治るだろう」
彼からそう診断されると、左肩にゆっくりと冷たい感触が伝わってきた。
「これでよし。二枚貼っておけば充分だ。
替えたくなったら、いつでもオレを召喚するがいい。
心逝くまでシップをお見舞いしてやろう」
「あんな羞恥プレイかますくらいなら、二度と呼びたかないわ。
つか、風呂から出たら、次は貴様の番だユーリ」
「そんなにオレの裸体が見たいのかよ」
「見たい」
「……お前」
「冗談よ。常日頃から前方サックリ裂けた服着ている野郎の肉体美に対して、恥も外聞も捨てて全力で見たいという度胸はない」
「まったく興味が無い訳ではないんだな」
「だって。そんな細身なのに、拳一発で一人の男をぶっ飛ばすんだよ。
どんな筋肉してんのか、気になるじゃない」
「あー…、そっちか」
心なしか落胆したユーリは、特にそれ以上突っ込まずに風呂場へいった。
何を期待していたんだ、この男は。
私も深くは考えず、数分後頃合を見てユーリの服を繕う為に風呂場に向かう。
洗面所の前まで着いて、彼が既に風呂場に入っているのを確認し、入室した。
「ユーリ。服直すから、持っていくね」
「わりいな。そこのでかい鉄の箱の上に置いてるから頼むわ」
でかい鉄の箱……?
一瞬理解できなかったが、洗濯機の上に脱ぎ捨てられた黒装束を見て、なるほどと手をついた。
せめて畳んどけよと心の中で呟きつつ回収していると、ふと洗面所の流しの傍に置いてある腕輪が目に止まる。
