第1章 【第1話】ニートを拾って
「さっきオレが頭叩いた時、左庇っただろ。
強盗の片割れが棍棒持ってたから、まさかと思ったが、今も酷いのか」
細かいところに気が付く兄ちゃんである。
惚けようとしたが、彼が下から上目遣いで私の顔を覗き込んできたもんだから、堪ったものではない。
無自覚のイケメン光線なんて卑怯だ。
「実は少し。あ、けど、腕は動くから大したことないよ」
「駄目だ。オレが責任を持って手当てしてやるから、大人しく手当てされろ」
「なんだその言い回しは……。
じゃあ、ユーリの怪我も私がみるから、大人しくみられてよね」
「お前が前に消毒してくれただろ。かすり傷なんだから、放っておいてもそのうち治るさ」
「駄目。ちゃんとお風呂入って、汚れ落としてから、改めてちゃんと手当てするの」
「あのなぁ」
「もう風呂の準備できてるから、先に入っといてね。
着替えはお父さんの使って。今着ている服私が破けたところ繕うから」
「オレの話聞いてねーのな。
用意いいというか、いろいろと抵抗ないというか、変に行動力あるというか、お前……」
ユーリは感心とも、呆れともつかない複雑な表情で、私の感想を述べた。
それは褒めてんのか。
強盗二人組みに関しては、ユーリの簀巻きにして川に沈めるという鬼のような提案を一部採用し、簀巻きにして空き地の隅に放置し、翌日にでも通報することにした。
当初の目的である台車を工場へ返しに行き、星空の下、帰り道を歩き始める。
隣には、私の歩幅に合わせてあるくユーリがいた。
また一緒にいられる。
ただそれだけなのに、胸の中から不思議と高揚感が生まれた。
無事帰宅した私たちは、早速ユーリに風呂を勧めるも「カレーが食べたいから、お前が先に入れ」と返され、カレーを用意してからお先に入らせてもらった。
お前はどんだけ食うんだよ。
とは言っても、家の勝手も知らないユーリから目を放すのは少々気が引けたので、入浴もソコソコ済ませて上がることにした。
リビングに戻ると、ユーリはソファーに横になっていたのか、私に気がつくと勢いよく上半身を起こす。
「お、出てきたな。左肩みせてみろ」
「え、マジでみるんだ」
「もちろんマジだ。医療品なら、さっきそれっぽいものを発掘したから問題ないぞ」