第1章 【第1話】ニートを拾って
「余計じゃないでしょう。
こ~んな真っ暗の中、ただでさえ視界悪いあの森をどうやって調べようって言うの?
あ、言っとくけど、灯り用意するから大丈夫ってのは無しね。
あそこ一見放置気味だけど、近所の方々が衛生上不法投棄されないように、時々遠くから様子見てるらしいから。
見つかったら、有無言わさずお縄よ」
「う……」
「貴方の言うとおり、こちらの事情がわからないのなら、絶対どーにもなんない。
朝まで待つにしたって、そんなコスプレ紛いの格好で一人ウロウロしてたら、即行補導されるから。
特に胸の辺りが猥褻物陳列罪で」
「いやお前、胸はどうしょうもねーだろ」
どーしょうもないんかい、その胸元。
ハッタリ半分で一気に捲くし立てると、ユーリは頑なな態度は徐々に崩れ始め、動揺へと変わっていく。
よおおし、もう一押しだ。
「ユーリのためだけじゃないの。
私、さっき襲われたばかりなのに、数日間は家で一人ぼっちなんだよ」
「……」
「友達誘いたくても、さっきみたいに強盗とかに襲われたら、太刀打ちできないし。
ユーリみたいな強い人が傍にいてくれると、すっごく安心できるの」
「わかった。わかったよ」
「じゃあ……!」
「がそんなにオレこのとが心配だって言うなら、仕方ないよな」
「私が?」
彼は苦笑しながら、私の頭をポンポンと叩いた。
何か間違ったこと言ったっけ? 嘘八丁がバレた?
理解できなくて呆けていたが、左肩の痛みで我に帰り、慌ててその手を払いのけた。
「ちょ、止めてよ。別にそんなのじゃあないってば!」
「いい加減素直になりなさい君」
「あ、あのねー」
「オレがどうなろうと構わないから、台車かっぱらってまで拾ったりしないだろ。
夕飯ご馳走して、真正面から話合わそうとしないで、どっかに突き出しとけば良かったんだ」
「あ、あれはその場の勢いみたいなもんで……」
「本当に一人が怖いっていうなら、友達の家に厄介になる方を選ぶんじゃないか?」
「うう……」
「けどまあ、オレとしても屋根のある場所で休みたいし。
お前を一人にさせるのは、正直気が置けない」
ウンウンと頷いていたユーリは、真顔に戻ってポツリとこう付け加えた。
「んでもって、お前の左肩の怪我をみないといけないしな」
「な、なんで!?」