第1章 【第1話】ニートを拾って
おいコラ待て! それはもしかしなくとも、18禁軽く突入しますよ発言なのか?!
ええいこのクソ! 無抵抗の娘を手篭めにしようなんざ、男の風上、いいや三角コーナーにも置けないわ!
貴様なんぞ排水溝にも値しない!
頭から罵倒を浴びせてやりたいが、口を押えられてかなわない。
幸い拘束している男の方は乗り気でないのか、否定的な返事する。
「余計なことしてないで、とっとと用事済ませようぜ」
「既に一発食らわせてんだ。ソッチも変わりゃしねーだろ」
「騒がれるとまずい」
おお! 頑張れ拘束男! そのいきだ!
「かまやしねーよ。
こんな人気のないところ、悲鳴ひとつ上げたくらいで誰が気付くんだ」
「ま、まあ。それもそうだよな」
おいいいいいい!
何テメェまで、デレェーとした声で賛同してんだよ!
ちょっとは冷静になれよ!…… いやまともだったら、最初から強盗なんてしないか。
なんて納得している場合ではない!!
「ンーっ! ンン!」
「ちょ、暴れるな! しょうがない、寝かしておくか?」
「それじゃあ、萌えないだろ」
私は現時点で萌えない。
健全な女子高生は萌えたりなんかしない。
てか、このシチュエーションで萌を求めるなんざ、テメェらどんだけドSなんだよ!
「でもあんまり大声出されると、流石にバレるんじゃね?」
「サルグツワでもしとくか」
ついに拘束プレイがきましたよ。
操のピンチに身体が竦んでしまう。
ヤバイ、冗談抜きでヤバイ。
無抵抗のまま終わるより、一か八か、蹴りの一発でもくれてやろか。
「いや、その必要はねぇよ、と」
背後から声が聞こえるや否や、ドンと重い音がして、殴った男が崩れ落ちた。
この声は――
第三の登場人物に胸を高鳴らせ、振り返ったその先には、闇の中から一人の男が街灯の光へと姿を現した。
「ユーリ!」
「よっ!」
私が呼ぶと、彼は軽く手を上げて返事した。
「聞き覚えのある声がして、急いで来てみれば。お前、ここで何してんだよ」
「台車返しにきたの」
「オレを追いかけてくれたワケじゃねーのか……」
私が台車を指差すと、ユーリはガックリ両肩を落とした。
一丁前に出てった癖に、追いかけて欲しかったのかこの男。
飄々と私に話しかけていた彼は、次にニット帽の男へ鋭い眼光を向けた。