第1章 目覚め
「君、初めて聞く声だけど、どうしてここにいるの?」
少年が突然、そう尋ねてきた。
「…私にもわからないの。」
私は少し黙り込んでから、言葉を続けた。
「目を覚ましたとき、君たちの村にいたんだ。でも、すぐに追い出されて、気づいたらここにいた。」
少年は少し黙って考えるようにしてから、驚いた顔を浮かべて言った。
「じゃあ、昨日みんなが言ってた、“異質な化け物”って君のことだったんだね。」
その言葉に、私は一瞬黙り込んだ。あの村で、私が化け物だと恐れられていたことを思い出す。
「あ…、ごめん。僕、そんなつもりじゃ…。」
化け物という言葉に罪悪感を持ったのか、少年は謝罪する。
「ううん、大丈夫。」
私は淡々と答えた。
「僕はパイロって言うんだ。12歳!」
パイロはにっこりと笑って、教えてくれた。
「君は?」
その質問に、私は少し考えてから口を開いた。
「... ヒツキ。」
「ヒツキ…?」
「うん、…多分…10歳くらい…。」
少し不安そうに言うと、パイロはにっこりと笑った。
その答えを聞いて、パイロは軽く頷いた。
「パイロはどうしてここにいるの?」
「僕は、よくここで、クラピカと遊んだりしてたんだ。」
彼の口元がほんのりと笑う。
「クラピカって?」
「僕の親友だよ。」
パイロの顔に少し寂しそうな表情が浮かんだ。
「昨日、僕の目を治してくれる医者を探すために、旅に出たんだ。」
「…寂しいんだね。」
私は少し心が痛んだ。
「うん。」
彼は小さく頷き、少しだけ顔を下に向けた。静かな空気が流れる。
「私が…怖くないの?」
思わずその言葉が出た。
パイロは驚いたように私の方を見ると、優しく笑った。
「怖くないよ。」
「村の人たちは怖がってたけど、君はこうやって会話ができるし、声も優しそうだもん。」
その言葉に、私の目から涙が一粒、こぼれた。
「ヒツキ、良ければ…僕と友達になってくれない?」
パイロは少し恥ずかしそうに、でも真剣な表情で言った。
私はその優しさに胸が熱くなり、笑顔を浮かべながら答えた。
「うん、ありがとう。」
パイロは満面の笑みを浮かべて、私の手を握った。
目覚める前の記憶もないし、何をどうすればいいのか全く分からないけれど、とりあえず彼の言葉に甘えたかった。