第1章 目覚め
翌朝、目を覚ますと、体が重たく感じた。
疲れが抜けきらないまま目を開け、あたりを見回す。
洞窟の中はひんやりとして、体が寒さに震えるほどだ。
「…うん、なんだか寝すぎた。」
体を起こし、少しずつ動かすと、身体がだるさを訴えてくる。
けれど、朝の空気は澄んでいて、何だかすがすがしい気持ちになった。
洞窟の入り口に向かうと、外の光が差し込んでいて、柔らかな日差しが湖の水面に反射していた。
喉が渇いているわけではないけれど、昨日の疲れを癒したくて、冷たい水に浸かりたくなった。
水浴びをして、少しでも体をリフレッシュしようと思ったのだ。
着ていたボロボロの白いワンピースを脱いで、湖のほとりへと歩き出す。
冷たい湖の水が足元に触れると、身体にひんやりとした感覚が広がり、少し躊躇しながらも、私はそのまま湖に足を踏み入れる。
次第にその冷たさが心地よく感じられて、身体全体が水に浸かるのを待った。
「...冷たいけど、気持ちいい。」
湖の中に完全に浸かると、冷たい水が体中を包み込み、昨日の疲れが少しずつ取れていくような気がした。
息を吸い込むと、清涼感が身体の隅々まで広がり、やっと心地よさを感じ始める。
「この体...10歳くらいかな...?」
その瞬間、ふと昨日のことを思い出した。
「ここは、現実なんだよね...。」
あの村から追い出されたことが、最初は夢のように感じていた。
でも、今こうして湖に入って、冷たい水に触れている自分を見ると、これは夢ではないと実感する。
「… ヒツキ。」
名前が口をついて出た。
昨晩、夢の中で、私は誰かにヒツキと呼ばれていた。
それが私の名前だというのだろうか。
それとも何か別の意味が込められているのか、わからない。
「ヒツキ…か。」
その名前を呟くと、何故か心が落ち着くような気がした。
まるで、ずっと前からその名前を知っていたかのように。
その時、茂みの中から物音が聞こえた。
私はふと警戒し、耳を澄ます。
「誰かいるの?」
その声とともに現れたのは、昨日村で見た村人たちと同じような民族衣装を着た少年だった。