第1章 目覚め
「……ハンター?」
私は掠れた声でそう呟いた。
「……あぁ。」
カイトと名乗った男は短く答える。
「とりあえず、飲め。」
彼がそう言って、小さな錠剤と水の入ったカップを差し出した。
「鎮痛剤だ。少しは楽になる。」
私はお礼を言おうとしたが、思うように体が動かない。腕に力が入らず、手を伸ばすことすら難しい。
カイトは少しため息をつき、無言でカップを持ち上げる。
「ほら、ゆっくり飲め。」
そう言って、私の口元まで水を運んでくれる。冷たい水が喉を潤し、少しだけ息がしやすくなった。
「ありがとう……。」
なんとかそう伝えると、カイトは黙ってカップを置いた。
少し間を置いて、私は恐る恐る尋ねた。
「……あの、緋月って言います……。ここは?」
カイトは短く息を吐くと、静かに答えた。
「お前らが倒れていた場所の近くに、ここがあった。どうやら誰も住んでいないらしいから、運んだ。」
「君は丸2日寝てたんだよ。」
パイロがそう言いながら、心配そうにそっと私の手を握る。
(2日……?)
私の中に、村が襲われた光景が蘇る。
燃え上がる炎、響き渡る悲鳴、血に染まった大地——
胸が締めつけられるように痛んだ。
「……さて。」
カイトの低い声が響く。
「何があったか、詳しく聞かせてくれるか。」
私は一瞬言葉を詰まらせた。
(……どこまで話すべきだろう。)
でも、誤魔化したり、隠したりするようなことじゃない。
ゆっくりと、少しずつ言葉を紡ぐ。