第1章 目覚め
必死に村の中を駆け回り、パイロを探し続けていた。
血にまみれた村の中を進むたび、無数の倒れた人々の顔が目に飛び込んできた。
焦りと恐怖が交錯するが、私は自分の足を止められずに、あずきを抱きながら駆け続けた。
その時、ふと視界の隅に動くものが見えた。
目を凝らすと、パイロが両親と思われる人物に支えられながら、必死に村の外へと向かっている。
「パイロ!?」
私は一瞬足がすくんだが、すぐに駆け寄った。
「パイロ!大丈夫!?」
パイロは私の声に気づき、驚いた顔で振り向いた。その目は、混乱と不安に満ちていた。
「ヒツキ!?」
驚いた様子で立ち止まったパイロの両親も、私の姿を見て目を見開いた。
パイロの両親は少し後ろに下がり、私を警戒している様子だったが、すぐにパイロが口を開いた。
「大丈夫だよ、この子は僕の友達なんだ。」
その時、近くで何かが崩れ落ちる音と、悲鳴が聞こえた。
「っ…、こっち!」
私は迷うことなく、パイロとその両親に呼びかけながら、彼らを自分の洞窟まで誘導しようと考えた。
周囲は今まさに混乱し、誰もが必死に逃げていた。
「来て!早く!」
両親は少し驚いた表情をしていたが、私の必死な態度に反応して、一緒に走り出した。
(敵は何人いるの...?逃げ切れるの!?)
走りながら、私は何度も振り返り、背後を確認した。
恐ろしい音と共に、焦げ臭い匂いが風に乗って漂ってきた。振り返ると、村の一部が燃え始めているのが見えた。
その時、突然、前方から何かが現れた。
大柄な男だ。まるで山のように大きな体を持ち、鋭い目つきで私たちを見据えている。
男は静かに立ちすくんでいたが、その一歩一歩がまるで迫るように重く、確実に私たちに近づいてきた。
「……!」
私は立ち止まり、冷や汗が一気に流れた。背筋が凍るような圧力を感じる。
「お前ら、どこに行こうってんだァ?」