黒バス triangle SS~secret story~
第8章 運命が交わったら
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「余命一年です。」
俺が小6になったばかりのころだった。
その日から父さんはなにも書かなくなった。
母さんは気丈に振る舞っていた。
でも1人で泣いていたのを知っている。
一年後には父さんがいなくなってしまうかもしれないことを、妹はわかっていないようだった。
俺はあの時どうしてたのだろうか?
凄く傷ついたのだろうが、あまり記憶に残っていない。
でも一つだけ。
一つだけ確かだったことがある。
昼夜問わず、ずっと執筆していた父さんがなにも書かなくなった事実。
ああ、父さんは本を書きたくなくなってしまったのだ。
書きたくないから書かないのだ。
父さんは本が嫌いになってしまったのだ。
それは俺にとっても大きな衝撃だった。
あの頃の父さんは目も当てられない状態だった。
家にいるのがつらいらしく、父さんは外に出かけることが多くなった。
俺の心に寂しさが生まれた。
その気持ちを隠すように仕事を始めた。
次第に気持ちを隠す方が楽になった。
その影響もあって無表情になっていった。
そして、あの事故が起こったんだ。
父さん、優、それに俺も。
多くの運命を変えることになる事故だった。