黒バス triangle SS~secret story~
第8章 運命が交わったら
子供の頃、俺は父さんに聞いたことがある。
「なんで本を書いているの?」
と。
そのとき父さんはこう答えた。
「人が運命と呼ぶところには必ず選択肢…道がある。本を通して、読者にその道を増やして欲しいと思っているからだ。」
ああ、きっと凄いことなんだろうな。
俺には理解出来そうもない考えが父さんの中にはある。
難しくて凄いこと。
言い切ってから、父さんは照れたように笑った。
「っていうのは取材用の回答。千秋には本当の理由、教えてあげる。」
内緒話をするように、父さんの口が俺の耳に寄り添う。
誰も知らない秘密を共有するようでなんだかワクワクした。
「俺が書きたいから。」
「………それだけ?」
答えにぽかんとする。
「自分がしたいことをしたいだけする!!それが人生を楽しむ方法だって思うんだ、俺は。」
父さんは楽しそうに笑った。
俺もなんだかよくわからないけど楽しい気持ちになった。
『自分がしたいことををする』
あの時はまだ幼かった。
だけどその言葉は簡単で凄いことだと思えた。
それは今も変わらない。