黒バス triangle SS~secret story~
第8章 運命が交わったら
ーーーーーーーーーーーーーー
高1 秋
何の因果か俺は優に出会った。
これも運命なのか。
優から父さんのことを聞いた。
「亮さんは私の知らないことをたくさん教えてくれた。」
…知ってる。
俺もそうだった。
「今、私が生きていられるのは亮さんのおかげ。」
申し訳なさそうな声で言う優。
もう大丈夫なのに。
どうやったら伝わるんだろう?
父さんならなんて言うだろう?
「…父さんはお前と出会う前、死んでいた。」
「えっ?」
訳の分からなそうな顔をしている。
俺もわからない。
自分が何を言おうとしているのか。
だが裏腹に言葉は紡がれていく。
「でもお前と出会って、もう一度執筆を…生きることができた。」
そうだ。
俺は一番近くで見てきた。
父さんが執筆中に一番生き生きとしているところを。
最後の最後に優がもう一度命を吹き込んでくれたことを。
「ありがとう。」
俺はいつの間にか微笑んでいた。
どんな仕事の時よりも柔らかく。
「こちらこそ、ありがとう。」
優も笑った。
涙を浮かべながら、それでも笑った。
父さんの生きがいは本だった。
俺に生きがいを与えてくれるものはわからない。
モデルの仕事かもしれないし、そうじゃないかもしれない。
でも俺は『今』を楽しいと思うよ。
自分の選んできた運命の道は間違ってないと思うんだ。
Fin.