第2章 夏休み
柊がキーパーだったこともあり、蜂楽とFK勝負をすることになった。2mの塀のコンクリートをゴールに見立てる。5本勝負。
柚はベンチに座って観戦する。
「お兄ちゃん、負けたらジュースおごってね」
「これでも県予選ベスト4までいったんだぞ。よっしゃ、来い!」
「行っくよー!!」
1本目、蜂楽がドリブルで抜き去ると見せかけて、フェイントをかけ、ぽーんと柊の頭上を超えるシュートを放つ。コンクリートに当たって、1-0。
「やるな、蜂楽くん!」
「どんどん、行っちゃいます♪」
舌をぺろりと出して、次のシュートを放つがこれは柊に止められた。ゆらりと影が揺れて、蜂楽の目にはかいぶつの姿が見え始める。
3本、4本、と回数を重ねて5本目。前に出てきた柊にボールをぽんっと空中に蹴り上げると右足のアウトサイド、インサイドと動かしてくるりと抜き去る。かいぶつのイメージ通りに出したパスがそのままコンクリートに当たって、とんとんとんと跳ねた。
「やった!空中エラシコ成功!!」
ガッツポーズする蜂楽。
やっぱサッカーってめちゃくちゃ楽しい!
(今の何?すご…。かっこいい…!)
「スッゲーな!お前!最後のはパスっぽかったけど、超うまいじゃん!」
興奮した柊は蜂楽の肩を抱き、頭をくしゃくしゃと撫でる。
サッカーにあまり興味がなかった柚さえ、最後のプレーには鳥肌が立った。いつもの無邪気な顔とは全然違う表情に心臓がどきどきと高鳴って、なかなか治らなかった。