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隣の席の蜂楽くん【ブルーロック】

第2章 夏休み


 夏休みになった。

 柚は家業の和菓子屋の手伝いで忙しい。和菓子屋"たかなし堂"は大正時代から続く老舗で、地元ではそこそこ有名な店。
 今は祖父母が営んでいるが、ゆくゆくは兄の柊が継ぐ予定で祖父の元、修行真っ只中だ。

 得意先へ品物を配達した後、自転車で帰宅した柚は店の入口から中に入る。暑くて汗をかいてしまったから、期間限定のかき氷でも食べて涼みたい。この時間ならお客は少ないはずだ。

「おばあちゃん、ただいま〜」
「委員長、おかえり!」
 きゅるんとした天真爛漫な笑顔。蜂楽廻がそこにいた。

「ば、蜂楽くん?なんでウチに!?」
「委員長の家、たかなし堂っていうんでしょ。前にもらったお菓子に名前書いてたよ」
「ちょっと待ってて!」
 蜂楽がいるんならこうしちゃいられない。柚は急いでシャワーを浴びて着替える。

 蜂楽はその間も飲食スペースでまったりお菓子を食べていた。足元ではサッカーボールをコロコロ転がしている。
「おばーちゃん、お茶おかわり!」
「はいはい、男の子はよく食べるねぇ」
「うん!すっげー、おいしい!」
 おばあちゃんもにこにこしていて、あのきゅるんとした笑顔にやられたに違いない。

「私に何か用だった?」
「あ、そうだった。これ大阪のお土産!ドリブル旅してきたんだー」
 お土産のたこ焼きせんべいを受け取りながら聞き返す。
「ドリブル旅?」
「うん、日本橋から大阪までずっとドリブルして行ってきた。帰りは親と飛行機だったけど」
「ずっと?」
「名古屋までは車に乗せてくれた人がいたけど、そこからはずっとドリブルで行ったんだー!楽しかったよ!プリン食べたり、温泉旅館泊めてもらったり」

 いくら名古屋からでも徒歩ならそんな一日二日で着かなくない?と柚は思ったが、深く考えるのをやめた。


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