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隣の席の蜂楽くん【ブルーロック】

第6章 トラウマ



 “彼女になってよ"

 その言葉を忘れられるわけない。だけど考えないようにしてた。
 だってブルーロックから帰ってきて、私以外の人と関われば蜂楽の気持ちは変わってしまうかもと思っていたから。


(なにこれ?)

 さっきまで怖くてたまらなかった雷と雨の音。それが少しだけ小さくなった気がする。
 その代わり、蜂楽の心臓の音が伝わってくる。ドクドク、ドクドク、速い鼓動。

 その時、パッと部屋の明かりがついた。停電が復旧したらしい。
 急に冷静になって、今の状況はマズいと思った。お兄ちゃんにでも見られたらどうすんの。

「蜂楽くん、離して」
「…キスしていい?」
「だめに決まってるでしょ!」
「だめっていってもするけど」

 蜂楽はニッと笑った。いつもの天真爛漫な笑顔じゃなくて、こんな蜂楽くん知らない。
 離そうにも力強すぎて全然離れてくれない。もうちょっとで唇が触れちゃう。



 コンコン、とノックする音。少しだけ蜂楽の力が緩んだ隙にさっと距離を取り、ドアを開ける。
「柚、大丈夫か?」
「全っ然、平気!!お兄ちゃん、蜂楽くんよろしく!」

 蜂楽を部屋の外に引っ張り出すと、柚はバァンとドアを閉めた。
 兄は意外そうに目をぱちくりした。雷と大雨の音が大嫌い。兄は柚の幼い時のトラウマをよく知ってる。ひとりでいると怖くてたまらないだろうから、と蜂楽を置いて行ったのに。


 柚はベッドに倒れ込む。こんな天気の日はいつも怖くて眠れない。だけどこの日は別の理由で眠れなかった。

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