第6章 トラウマ
「大丈夫?」
さっきまで怖い顔をしていた蜂楽が、心配そうにしゃがんで柚の顔を覗き込む。
体が震えて心臓がバクバクと爆音を奏でるが、平静を装う。大丈夫、大丈夫。ただの雷だから。
「…ごめん、蜂楽くん何か私に用だった?」
「えっと、あのさ。望月って、委員長の彼氏?」
勢いを削がれた蜂楽から刺々しい雰囲気が消え、やんわりと柚に話しかける。
「だから違うけど」
「じゃあ、なんで毎日一緒に帰ってるの?」
「自習ルームで勉強教えてもらってたの。テスト近いし」
蜂楽はじっと柚を見る。
「ねぇ、ほんとに、ほんとに、ほんとーうに、もっちーと付き合ってないの?」
いや、もっちーって。勝手にあだ名つけてる。
「だから、違うって」
「そっか!よかった!」
やっと蜂楽はハニーレモンの瞳を細めて笑った。きゅるんとした笑顔を見るのも久しぶりだ。
「あのさ、委員長とずっと話をしたかったんだ。ブルーロックの話、聞いて。すごい奴がたくさんいたんだよ♪」
蜂楽はつらつらと、ブルーロックでのことを話し始めた。潔が、千切んが、凛ちゃんが、と。ちゃんと仲間って言える人達に出会えたんだな。よかった。
「U-20戦見たよ!ブルーロック、いっぱい応援したんだから。次の日、声ガラガラになっちゃった」
「ブルーロック応援してくれたの?糸師冴のファンなのに?」
「え?別にファンってわけじゃないけど」
「だって前にかっこいいって言ってたじゃんか」
確かにかっこいいって言ったっけ。でもそれは海外で頑張ってる一選手としてなんだけど。
「蜂楽くんが出てるのに応援しないわけないじゃん。すごく頑張ってるの伝わってきたし」
「…それ、ほんと?」
疑り深いなぁ、今日の蜂楽くん。
「ほんと、ほんと。ちゃんと蜂楽くん応援したよ」
蜂楽は嬉しそうに笑う。
だって柚はうんうん、と何でも聞いてくれるから、ずっと話していられる。やっぱり好き。俺には委員長しかいない。