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隣の席の蜂楽くん【ブルーロック】

第6章 トラウマ



(あちゃー、いっぱい…)
 天気がいいからか、屋上は混雑していた。座るスペースがなさそうで踵を返そうとした柚を呼び止める声。

「小鳥遊さん、ここ座る?」
「望月くん、いいの?ありがとう」
「うん。どうぞ」
 望月琥太郎は中学の同級生。成績優秀で特進コースだから校舎が別で出会うことは少ない。

「なんか久しぶりだね。望月くん、元気だった?」
「うん。小鳥遊さんは志望大もう決めた?」
 三年生はもうすぐ。話題になるのは自然と大学入試のことになる。ちなみに望月はT大の医学部志望らしい。すごい。

「私はO大の生活科学部受けようかなって思ってるよ。栄養学に興味があって」
「いいね。そういや、駅近くの自習ルーム知ってる?おすすめなんだけど…」


 放課後。望月と校門前で待ち合わせしていた。おすすめの自習室を教えてくれると言われて。
 蜂楽くんも頑張ってるし、私も将来のために頑張らなくちゃ。
 

 望月と柚が仲が良いのは、家庭環境が少し似ているから。
 中3の一学期に転校してきた望月は、元は都内の有名私立中学に通っていた。しかし、ある日父親が不倫相手と失踪し、学費の支払いも難しくなって転校してきたのだ。
 それをクラスの男子にからかわれていたのをかばったのが、仲良くなったきっかけである。

 ただ、柚にとっては思い出すのも胸糞悪い。
 不倫するような奴らはまとめて地獄に落ちてしまえばいいのに。




「柚も見に行く?蜂楽くん、これからサッカー部の練習に参加するんだって」
 何それ、めっちゃ見たいけど。
「行きたいけど、この後予定入れちゃったんだよね…」
「しょーがないな。動画撮って送ってあげるよ」
「マナ、ありがと」

 校門に向かう間、サッカー部のグラウンドには人だかりが出来ていた。
「蜂楽くーん、頑張って!」
 黄色い歓声が飛んで、振り返ろうとしてやめた。
 結局今日は全然蜂楽と話せなかった。すごく遠い人になったみたい。


 先に着いていたのは望月で、柚の姿を確認してから気になるのか歓声の方に顔を向けた。
「すごいね。蜂楽くん、だっけ?小鳥遊さん、同じクラス?」
「そうだけど」
「うちのクラスでも話題だったよ。すごい試合だったって」
 もう学校中の有名人だなぁ、蜂楽くん。

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