第5章 お守り
今夜はU-20日本代表の試合。今、注目の糸師冴が出場するとあって、兄は少しそわそわしている。
本当なら現地で見たかったけど、チケットは即完売だったらしい。
試合1時間前、柚はこたつでみかんを食べながら、まったりしていた。このまま家のテレビで試合を見る。
U-20の選手は発表されてたけど、相手のブルーロックチームは高校生代表って以外何も情報がない。
兄に聞いても何もわからなくて、ほんとに謎。
蜂楽くんが行ってる合宿とは関係あるのかな?
同じこたつで兄の柊はスマホをポチポチしながら、今日の試合の情報収集をしている。
「ブルーロックの監督は、絵心甚八って誰?聞いた事ねぇな。あ、ブルーロックのスタメン発表されたわ。キャプテンは糸師凛…?糸師冴の弟?いや、弟いたんか。あと、知ってる選手はいな………」
「…お兄ちゃん?」
急に、饒舌にしゃべっていた兄がスマホを凝視したまま固まっている。
「…なぁ、蜂楽くんって下の名前廻じゃないよな?」
「廻だよ。蜂楽廻くん。珍しいよね」
「左サイドバック、蜂楽廻…」
「は?」
壊れたロボットみたいに同じ言葉を繰り返す兄のスマホを覗き見る。
そこには確かに蜂楽廻、と名前があった。同姓同名?いや、まさか。
「うそ……、ほんとに蜂楽くんだ…。なんで??」
「俺が知るかよ…」
その日、確かに蜂楽廻の運命の歯車は廻り始めたのだ。