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隣の席の蜂楽くん【ブルーロック】

第4章 かいぶつ


 誰もいない所にパスを出すな。
 今まで嫌ほど聞いた言葉だ。

 仕方ないじゃん。お前らかいぶつじゃないんだから。
 かいぶつだったら、おれのアシストでシュートまで決めてくれるんだよ。

 サッカーは楽しいのに、サッカー部は楽しくない。
 ただ同じレベルでサッカーができる、友達がほしい。
 それが蜂楽廻の願いだった。


 コンビニから戻った柚は高架下へと降りる。がさがさと枯れ草が揺れて蜂楽が顔を上げた。
 
「委員長?」
「蜂楽くん、寒いとこで何してるの?風邪引くよ」
 はい、と柚は買ってきたばかりのホットココアを差し出した。
「…ありがと」
「こんな所で自主練?」
 そばに転がるサッカーボールを見て、柚は首を傾げる。

「委員長、試合負けちゃった…」
「知ってる」
「高校のサッカー、あんまり楽しくないかも…」
「そう…」
 柚はココアの缶を隣に置くと、自分に巻いていたマフラーを蜂楽の首に巻く。ふわりと甘い香り。
 蜂楽のサッカーボールを借りるね、と手に取った。
「私、今リフティング練習してるんだよね。ちょっと上手くなったから見てて!」

 柚は足元でぽんぽんとボールを上げる。
「1、2、3、っと…、ああっ」
 ボールは柚のイメージとは裏腹に違う方へ転がって行く。
「…下手くそ」
「黙って見てて!」

 柚は何度も何度もチャレンジして、蜂楽は不思議と飽きずにそれを見ていた。
 そしてやっと。

「…8、9、10!見てた!?10回続いたの、新記録!」
 やった、とぴょんと笑顔で柚は飛び跳ねた。
 反則じゃん。何でこんなに可愛いんだよ。もうレッドカードだろ。
「ずるい…」
 友達だけじゃ満足できなくなる。もしおれが好きだって言えば、君はどんな顔をする?


「代わって、委員長。リフティングってこうやるんだよ」
「わぁ、やっぱり上手!」

 蜂楽のリフティングを見て、柚は拍手する。マフラーを巻いたままなのに、ボールが蜂楽にくっついて離れない。

 そうそう、この感覚。やっぱり、サッカーは楽しい。

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