第3章 修学旅行
委員長こと、小鳥遊 柚は真面目で無愛想だ。学級委員に選ばれるだけはあって成績優秀で隙がない。けれどクラスメイトが困っていたら、すぐに手を差し伸べる優しい人だ。
自分より10cm以上身長も低いはずなのに、頼りがいがあってクラスにいなくてはならない存在。
柚にドリブル旅のお土産を持って行ったのは、お菓子をくれたり、文房具を忘れたら貸してくれたりするから。だって優が「お土産は普段お世話になっている人に渡すのよ。気持ちが大事」って言ったんだ。
夏休みに会った柚は、学校で会う彼女と違って見えた。学校よりよく笑うし、リフティングは下手くそだし、花火大会で浴衣が可愛いとほめると頬を染めて恥ずかしそうにするし。委員長って呼ぶより名前で呼びたくなったんだよ。そのあと自分も照れたけど。
修学旅行なんて友達もいないのに、行ったって楽しくない。サッカーしていた方がいい。かいぶつもいるし。
でも委員長と一緒だったら楽しいかな。もう俺たち友達だよね。おいしいお菓子も食べれそうだし、と思って少し勉強したら再テストに合格した。これは神様が修学旅行に行けって言ってるんだね。
(友達と一緒だったら、修学旅行楽しいな。ま、サッカーも楽しいけど)
蜂楽はリフティングしながら、今日一日の思い出を噛み締めていた。抹茶は苦くて飲めなかったけど、和菓子はどれも美味しかったし、柚は神社でお守りを買ってくれた。
(あ、ミスった)
ボールが蜂楽の元を離れて、ベッドに寝転んでいたクラスメイトに勢いよく直撃して、物音を立てながら床を跳ねていく。
「蜂楽!部屋の中でサッカーとかいい加減にしろよ!」
「ごめん、ごめん」
その直後に強いノックの音と共に教員が部屋を覗く。
「お前ら!何、騒いでる!?」
「すんませーん…」
教員に怒られた蜂楽はバルコニーに出る。ここならリフティングしても怒られないだろうか。いや、サッカーボールが下に落ちたら探しに行くの面倒くさいしな。
そういえば、昼間の動画を柚は見たのかな。スマホをポチポチするとすぐに今から見ると返信が来た。